曲はいつまで経っても同じで、変わることがありません。昔、僕が作曲は料理のような物だと言ったのに対してとある友人が言いました。「料理は食べたらおしまいだけど、お前の曲はこれからずっとお前が死んでも人に届く。」色々な意味でこの言葉には目から鱗でした。正直なところ、この言葉以降、僕は作曲に対する考え方を少し変えました。 大学時代にソルフェージュのクラスで授業開始までの時間にクラスメイトと講師を交えて雑談していたことなのですが、パッヘルベルのカノンはとてつもなく良い曲であり、それはクラシックを学ぶ僕たち全員が同意出来る事実でした。でも、この曲はあまりにも有名であまりにも沢山の人があまりにも頻繁に演奏するので、「またこの曲か」と聞き手が感じてしまうんです。特に僕たちクラシック畑の人間からするとあまりに身近すぎるんです。 曲自体は素晴らしい芸術として歴史に残るべき物です。でも、それに対して天の邪鬼な感覚を感じてしまうのは僕たち聞き手である人の心であって、曲自体は作曲された頃と変わらず楽譜上にあるんです。良い曲でも社会的な位置づけや好まれ方によって色あせて見えるんですが、色あせているのは実は僕たちの心であって曲自体ではない、そんな話を大学時代にクラスで雑談していたことを思い出します。 聴いたことがない曲や普通の人たちが知らない曲に美しさを感じるのは別におかしいことでも何でもありません。でも、だからといって頻繁に演奏されるスタンダードナンバー達を卑下する必要は無いはずなのです。それはそれで良いもの、そう感じられることが出来るのはあんまり簡単なことではありません。僕たち人間は他の人々の感想や意見に簡単に信念や感覚をねじ曲げられてしまいますから。 色あせない心を保つことは本当に難しいことだと僕は思います。ただ、不思議なことに世界最高峰の演奏家達はなぜか全員そんな色あせない心を持って音楽に取りくみ続けているんですよね。本当に不思議です。
by Alfred_61
| 2011-02-07 21:55
| 日記
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