amplitudeとかvelocityとか、まあ簡単に言って音がうるさいとかうるさくないとかを測る物差しはいくつかあります。でも、機械で仮想した音楽というのはどうしても現実の音楽とは同じにならないものです。それを個人的にとても強く感じるのが"ピアニッシモ"という定義について考える時です。 例えば100人規模のオーケストラや大合唱団で、一番"小さな音"を出そうとするとどうすれば良いでしょう?それはまあ簡単なことで、たった一人が出来る限り小さな音を演奏し、それ以外の全員が音を出さなければ良いのです。でも、それは"ピアニッシモ"というよりもどちらかというと非常に聴く人の意識を集中させる為に細部まで聞こえてしまうんですよね。フォーカスレベルが高いということは、いくらヴェロシティが低くてもそれは"ピアニッシモ"とは言えないと僕は思います。少なくとも、僕は作曲の上でそういう音を"ピアニッシモ"としては表現しません。 不思議な話なんですが、実は100人全員が可能な限り小さな音を出すと、本物の"ピアニッシモ"になるんです。たった一人が小さい音を演奏するより、変な話"ピアニッシモ"に聞こえるんですよ。ヴェロシティの高い低いと、人間が知覚する音の大きい小さいは必ずしも同じではないのです。ここで言及しているのはそこに関連する"フォーカス"についてですが、これの集中と分散も人の耳に届いたときのうるさい静かという感覚に影響するのです。 大きい音をずっと演奏し続ければそれがスタンダードになってしまうわけで、いつの間にか高いヴェロシティがうるさく感じなくなってくるんです。ライヴハウスに入り浸っているとその感覚は結構リアルに体験することが出来ます。僕たち作曲家がやっているのはあくまで人の耳が聴いた時の感覚をコントロールするというか操作するというか扇動するというかそういう工作なわけで、決して何と何を組み合わせれば何になると公式通りに物事が成立するようなパズルとは違うのです。 ピアニッシモをピアニッシモにするにはそれなりの技術が必要です。ただ、何をどうすればピアニッシモがピアニッシモになる、というのはあまりにも曲や状況に応じて相対的なために、方程式や規則のように定義することは出来ないんです。まあ、定義出来ないから作曲家なんていう職業が成り立つのでしょうが。
by Alfred_61
| 2011-02-21 23:55
| 日記
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