モノトーンの勉強にグレースケールというものがあります。これは完全な白から完全な黒までを同じ面積の正方形複数個で繋げ、白から黒までを徐々に黒の濃さを変えるだけで繋げる、というものです。しかし1つの正方形の中にムラがあってはいけず、つまりは灰色の段階を作るわけです。 これに例えて言うと、現在世間に溢れている音楽は白と黒の間の灰色の濃淡でのみ作られた音楽であり、同時にその世界から出ることが出来ない芸術だと僕は考えています。しかし、グレースケールはあくまでも白と黒という"存在"の間を繋ぐものでしかなく、"色がない"という状態から徐々に色を出していくようなグレースケールとは根本的な発想として違います。 音があるか無いか、本当はそこにとても大きな喜びや悲しみが生まれることもあるのですが、現代では音はあって当然のものであって、当然のように巷に溢れる音の中で音楽家は音楽をやっているわけです。 今年の初めにカリフォルニアに行って、本当に久しぶりに音のほとんど無い、きわめてdBの低い生活をしてきました。アメリカで5年間一人暮らしをしていた頃の僕の人生にはあんなに音自体が少なかったのかと、ちょっと懐かしさも感じられました。今の日本での僕の生活には音が多すぎます。極端な話、高性能な耳栓を付けて電車とかに乗りたいところなのですが、それはそれで何かあったときに危険なので出来ません。 僕が作曲をする上で当然のように持っていた環境は、音があるかないかの部分に非常に近い場所だったのです。音符一つを書くことに、きっと今以上に感動を当時の僕は感じていたのでしょう。環境の変化と言い切るのはどうかと思いますが、少なくとも今の人生では音が多すぎて供給過多な感じが否めません。曲として書きたい音は沢山あっても、それを書くために自分自身の中の渇望を増幅させるという下らない作業をしている自分に最近気づいたりします。 まあ、先月末からクソ忙しくて、曲を書けないストレスは十二分に溜まっているのですけどね。Piece 10はジョン曰く10分を超えるんじゃないか、とのことですが、僕もなんとなくですがそう思っています。今で既に4分半くらいありますが、まだまだ言いたいことの1/5も言えた気がしていません。この曲、書き上がったらFacebookに楽譜をアップしたりしてみようかな。
by Alfred_61
| 2012-08-06 23:55
| 音の考察
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