1900年代半ばに生きたフランスのオルガニストMaurise Duruflé(モーリス・デュリュフレー)という人がいます。僕はこの人を作曲家として一番か二番に尊敬しています。この人は、数少ない「本当に美しいモノ」しか書かなかったオルガニスト作曲家です。 彼が生涯に書いた曲の数は遺作を除いてなんと14曲。僕が一年で書く量より少し多い位しかありません。しかし彼の曲のすべては、学術的に分析して尊敬を得るような類ではなく、曲の長さや規模で尊敬を得るでもなく、超絶技巧ででもなく、ただ人の心に直接響いてくるタイプの音楽です。特に有名なのはやはりRequiem op.9です。もともとオルガンと小規模合唱の為に書かれたこの曲は、本人によるオーケストラへの編曲版が主に演奏されます。完全に個人的な主観ですが、僕はこの曲以上に美しいRequiemを聴いたことがありません。 でも、僕が彼の曲で特に好きなのはMotets sur des thèmes grégoriens op.10という合唱組曲で、特にその最初の曲Ubi caritasです。この曲はその題名の通り、グレゴリオ聖歌のある曲集のcanti firmi(メロディー)を合唱曲に編曲したモノです。普通は「なーんだ、所詮グレゴリオ聖歌のバッタもんか」と思うのですが、一度聴くとそんなこともうどうでも良くなります。どうでも良いどころか、涙が出ます。 この人、フランスで当時巨匠となっていたNadia Boulanger(ナディア・ブーランジェー。Copland, Stravinsky, Boulez, Philip Glass, その他数え切れないほどの大作曲家を育てた伝説的作曲教師。本業はオルガニスト。)とも関わりがあったようで、実際ブーランジェー指揮のレコーディングなんかでオルガンパートを弾いてたりします。どうなんでしょう、作曲も習ったのでしょうかね。公の資料には彼女とデュリュフレーの関係はほとんど記述されていません。 初めてアメリカに来た頃はなんだか周りの波や流れに飲まれて、色々おかしな曲も書こうとしましたが、もう僕が今書いている曲はすべてデュリュフレーと同じように、単純に音楽としての美しさを追求したモノになりました。
by Alfred_61
| 2005-11-07 11:57
| 日記
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