ヴァイオリンを毎日弾き込んでいます。最低一時間は3分程度の曲、もっと言えば16小節程度のフレーズをひたすらイントネーション、音色、共鳴などすべてを磨き上げるように弾き込んでいます。意外かもしれませんが、楽器を弾くということは結構コリオグラフィー(振り付け)的な要素がありまして、次に自分がどう動く、どれくらい動く、どれくらい気持ちを込める、流れとしてどう体力配分をする、など練習を繰り返すことによって躰に覚え込ませていくということが大切なのです。だから、やっぱりじっくり練習した方が初見で弾くよりも響くのです。 今も仕事から帰ってきてから近所迷惑になるラインである午後9時頃を目処にじっくりと弾き込みました。今左手の指先には微妙な力のいれ具合でかかった弦への圧力が残っていて、今すぐにでもまた件の曲を弾きたくなりそうです。またまた意外かもしれませんが、基本的にヴァイオリンという楽器は指板(左手の指で弦を押さえる黒壇で出来た板の部分)を見なくても弾けるんですよ。ヴァイオリンはピアノや打楽器のように音の出る場所を目視で確認して叩くような楽器ではないんですよ。すべて、第一ポジション(一番低い音程を弾く左手の位置)から左手の指で音を"測って"いって高い音を弾くんですよ。決してギターのようにどの指がどのフレットを抑えているかを見て演奏するわけではありません。 先日雨の日に何度弾いても酷い音しかでなかったのが悔しくて、それからは目を閉じて練習するということを続けています。目を閉じることによって左手の指と右手が弓にかける圧力の微妙なバランスや、一本の弦を弾いているときに他の弦が共鳴する音をしっかりと感覚することが出来るのです。そして、目を閉じて練習した後目を開けると、それまで聴覚に集中していた意識が視覚に流れ込み、不思議な感触を耳に残すのです。 ヴァイオリンの練習に限らず音楽の練習をする時にこの"後味"のような感触はとても大切なものです。バンドでスタジオに入って練習をするときにも、良い練習が出来た時にはスタジオを出た後にも不思議な感触が耳や躰に残り、それがたまらなく心地よいのです。ソロで練習するときにこの感触を感じることと、アンサンブルで他人とセッションをして感じる感触とはまた別のもので、それぞれに形容しがたい不思議な感覚なのです。 はっきり言ってしまえば僕はヴァイオリニストではありません。僕がヴァイオリンを弾く理由はそういう不思議な感触をいつでも自分の力で感じることが出来るツールが欲しいからで、決してそれでお金を稼いだり人前で演奏するためではありません。けれども、自分に強い感触を残すような練習を繰り返していれば、その演奏、音楽は人前で演奏しても録音に録っても、聴く人の心に響く力を持つのです。それが音楽というものです。
by Alfred_61
| 2008-04-18 22:13
| 日記
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