戦争に行った人たちは、決してそれを誇ることはありません。僕が今までに出会った第二次世界大戦の生き残り、ベトナム戦争の帰還兵、それらすべての人たちが、戦争を誇ることはせず、戦争に関してもよっぽど近い関係になるまで一言も話してくれませんでした。かといって彼らは普段はとても陽気で快活で、くだらない冗談やその場のノリに任せて生きるように外見上は見えるのです。 本当に辛い経験をした人は、普段そういう話をしません。それが本当に辛い経験であったから、だからそれを人前で語って講演会のようなものでお金を稼いだり、その経験を生かした仕事に就いたりしないのです。本当の人生の経験をした人は、逆に普通の生き方にあこがれ、実際そういう道を進むのです。 偉くなろうとしたり、自分の名声を誇示する人ほど、根本的にはろくでもない人であり、ろくでもない芸術家なのです。本物の芸術家は、話をしたりする程度では絶対にわかりません。だって彼らは戦争を知っている人たちのように、本物の芸術に近すぎるためにそれを誇ることがないのです。 残念ながら、誰々という超有名人と演奏をした、とかどこどこの超有名ホールで演奏会をした、とか何々という超有名コンクールで賞を取ったとか、そういうことを聞いた時点で、僕はその人が言ってしまえば本物の音楽家でないことを悟ります。彼らはいわば職業音楽家であって、本物の音楽家ではありません。この言葉の意味、説明するのも面倒くさいのでしませんが、なかなか的を射た表現だと思います。偉いから、社会に認められるから、お金が稼げるから音楽家なのではないのですよ。本当の音楽を知っている人は、そういう生き方をしないのです。戦争を知っている人たちがそんなことをおくびにも出さないのと同じです。
by Alfred_61
| 2008-09-08 22:16
| 日記
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