中堅というか、人間は妙に理性で多少の理解をしてしまうと今度はそれまでのように自然体で対象物に対して向き合えるのではなく、固定観念や偏見を持ってでしかそれを感じることが出来なくなってしまうのです。僕は作曲家ですから、音楽のことをここでは書きます。 音楽という芸術において、ま~あ多く見られるのがちょっとかじってしまったが為に知ったかぶりをする人々。いや、当の本人達はそれが世界のすべてだと思いこんで音楽を捉えるのです。音楽に携わる者としてその現象はとても残念なことなのですが、ちょっと音符を並べただけで作曲を知ったつもりになってみたり、ちょっと楽器を弾いてみたらそれで演奏法のすべてを知ったつもりになってみたりしてしまうのです。 例えば見落とされがちであったり根本的に理解として欠落しやすいのが、音楽という芸術は常に時間に縛られた芸術であるということです。それは、一曲数分間の間だけではなく、作曲家の人生を見てもその人が作る音楽が時間によって良くも悪くも常に変化し続けていることや、既存の曲でも時代が変わることで捉えられ方が変わって全く違う世界を表現し始めたりするのが音楽なのです。ましてや最初の3分を聞いただけやCDの一曲目を聞いただけでその人の音楽のすべてを理解したつもりになって評価をのたまわっていただけることが世の中には多くあり、もう僕としては残念としか言いようがないのですね。 他には、例えば音楽に"絶対"はありません。絶対音感とかいう言葉がありますが、じゃあ何年代の音階に対して絶対的な音感があるのか、どんな調律法、どんな倍音構成において絶対的な音感があるのか、教えていただきたいものです。そもそも、誰が440HzがAの音だと決めたのですか。それは人間でしょう。人間が歴史上で決定したことに対して絶対だなんて、これは片腹痛い。自然界にある法則に対してならまだしもね。 絶対がないということはすべての曲に対しても、すべての音楽家に対しても言えることです。その人が絶対にダメな音楽家である、なんてことはないのです。その人の音楽はダメだ、と決めつけるのは音楽という芸術において最も愚直な発想であり、ここでの言葉で言えば"中堅の落とし穴"と言えるワケです。その音楽も誰がどこで演奏するかで全然表情も意味も変わるわけで、"これがこの曲のあるべき姿"とかいう絶対性を求める考え方も間違っているのです。 僕としては音楽家の端くれとして、例えば僕の曲を聴いて今まで当たり前だと思っていたことをぶち壊される経験をリスナーに感じて貰えるというのは嬉しいことだったりします。SOUND GATE ONEのCDの販売が始まれば、それを聞いた人の多くがそう感じて貰えると僕は願っていますが、さて、それも絶対はないので聞く人によるでしょう。人によればそう感じる人もいるだろうし、中には全然の人もいるでしょう。 でもまあ、そうやって考えてみればやっぱり音楽って面白いですよね。じゃあ音楽ってなんなのかという辺りまで話を持って行くと凄く抽象的ながらも明白なものに近づいていく感じがします。音楽ってなんなのか、誰もが感覚しているのだけれど誰にも説明が出来ない。だから音楽は面白い。だから音楽はやめられない。
by Alfred_61
| 2009-10-24 22:03
| 日記
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