5、7、5、7、7の音韻によって構成される和歌ですが、これを音楽だと捉えるとすると西洋音楽で言う所のパルスは一体どこにあるのでしょうか。タタタタタ、タタタタタタタ、タタタタタ、タタタタタタタ、タタタタタタタ、というリズムがあるわけですが、たとえこの"タ"がすべて同じ長さの4分音符だとしても、それがパルスだとは言い切れません。なぜなら、和歌の読み方(歌い方)には5、7、5、7、7、それぞれの節間にとる間の長さが一定ではないからです。つまり、"、"の長さが同じじゃないんですね。少なくとも"、"と"タ"は同じ長さではないし、どちらかがどちらかの倍数というわけでもないです。 このリズム構成が如何に西洋音楽の常識から乖離しているかというのは、簡単に4/4拍子と比べてみれば分かります。"5、7、5、7、7"には反復性が薄いんですね。例え同じ5という数字が二回出てきても、二回目が一回目の繰り返しであるという感覚が非常に薄いです。最後に7が二回繰り返しますが、これも繰り返しているというよりも全く別のものかもしくは二つで一つのユニットであるかのように聞こえます。さらに僕が一番和歌の個性を感じるのが、"5、7、5、7、7"が終わったあとの間です。ここに見えない間があるんですよね。簡単に言うと、このリズムの後にもし拍手をするとしても、いつどのタイミングで拍手をしていいのか分からないのです。なぜならそこには不確定な間が存在するからです。 僕は、そもそも和歌にはパルスは存在しないと思っています。"5、7、5、7、7"は細分化して最小単位を考えることが難しいと僕は思っています。このリズムは全体が一つのユニットであり、"5、7、5、7、7"という全体がそれ自体最小単位となるんじゃないかと僕は思います。メトロノームで決められたパルスを刻まなくても、この不思議なリズムは非常に心地よいリズム感を聴く人に与えます。ただ、和歌はあくまでも歌ですから、日本語が理解出来ない外国人にはあんまり理解出来ないのではないかと僕は思います。 いや、そもそも音楽にパルスが存在するのが当たり前である西洋文化からみると、はっきり言ってこの"5、7、5、7、7"というリズムは全く理解不能だし説明することも不能だと僕は思います。実際に世界のMusicologistが和歌や俳句のリズム構成を研究していますが、僕は日本人として今まで納得のいく説明を西洋人がしているのを聞いたことがありません。 結論を言うと、僕は和歌のリズムというのは日本人が持っている特殊なリズム感なんだと思っています。そしてそこには、西洋音楽には存在しない概念や可能性が無限に隠れているように思えるのです。西洋の真似事ではなく、歴史を遡って和歌の時代にまで戻ればこれからの未来に日本独自の音楽文化を作り上げるヒントを見つけることが出来るのではないか、と僕は考えています。実際、今僕が書いている曲には、和歌のような説明不可能なリズム構成がいくつか出てきます。
by Alfred_61
| 2010-07-08 23:55
| 日記
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