形あるものいつかは壊れる。まあ、俗に言う盛者必衰ってやつですね。自分がどれほど大切にしていてもそれはいつかは壊れるわけで、その時にはそれに別れを告げなければいけないのです。必ずその時が来る、ということは我々生者に平等に課せられたルールですが、ただしその別れの際に自分自身が一体どんなことを想うか、それは個人個人の自由です。 自分を裏切って目の前からいなくなる親友に対し、ただ悔しいとか恨めしいと感じるのは簡単です。けれども、本当は人間の感情なんてそんな単純な物ではなく、言葉では簡単に表現できる物ではありません。だから小説なんかでは状況描写に工夫をして、その分敢えて感情を言葉で表現することを避け、読者にそういう複雑な心境を感じさせようとする技術があります。 僕の作っている音楽という分野では、感情表現はどちらかというともっと直接的なものになります。音楽でも間接的や暗喩のような表現は出来るのですが、音楽にしかできない感情表現があります。それは感情そのものを音を通じて直接聞き手の心にぶつけるもので、それが出来るのはそんじょそこいらの音楽家ではなく本物の音楽家なのです。 僕が今書いている曲は別れ際の想いについてのものです。涙を流してサヨナラを言う、という状況でもそこにある感情というのは状況や人によって相対的なものです。ただ、僕は何かにサヨナラを言うとき、出来るだけ前向きになろうと努力します。前向きという言い方も言葉にすればなんだかぼやけた表現ですが、これを音楽で表現すると意外と簡単にできたりするのです。 音楽では、歌詞なんかで薄っぺらく表現するのではなく、もっと直接聞き手の心に干渉する表現法があります。僕はどちらかというとそんな音楽を作るのが専門なので、だからあんまり歌詞の付いた歌を作らないのです。歌詞は歌詞で良いんですけどね。でも本物の音楽家から依頼が来ると、やっぱりせっかくそれだけ特別な表現力を持っているのだから使わない手はないと考えてしまいます。おかげで僕の曲は大抵「技術的には果てしなく簡単だけど、音楽的には果てしなく難しい」と言われます。
by Alfred_61
| 2011-02-01 23:55
| 日記
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