一般的な話というか、こんなものはクリエイター個人で相対的な世界を確立しないといけないものなのですが、一体どうやって曲を書いているのかという質問をそれなりに今まで何度も受けてきたので、考察のような感じでちょっとまとめてみます。 作曲工程は大きく分けると以下の3つになります。 ① アイデアの発想・起草 (Inspiration) ② アイデアを曲として組み上げる (Composition) ③ 演奏者に演奏して貰う、もしくは電子楽器にプログラミングする (Performance) ②は幅広いので細分化します。(順番は適当です。) ■ 音の構成要素(和声、旋律、リズム、対位法・テクスチャ、音色、展開構成など)を組み合わせてアイデアに肉付けしていく ■ 楽器を割り当てる ■ 歌の場合は歌詞を音符に割り当てる 更に1項目目が幅広いので細分化します。 ○ Inspirationの部分をしっかりと洞察し特性を理解した上でそのアイデアがどういう着地点を目指しているのかを見極める。 ○ Inspirationの状態に従って、必要な部分を肉付けしていく。 → 例えば4小節分のメロディーがアイデアならば、そこに和声を付けたり、割り当てた楽器にとって最もそのメロディーが美しく聞こえるようにリズム構成を調整する。 ○ Inspirationの雰囲気を最大限活かせるようにテクスチャを構成する。 → 例えば打楽器の何の音を使うか、など聴き手に与える印象を調整する。 ○ 俯瞰的に捉えてInspirationを最も効果的に聴き手へ提示出来る展開構成を組み立てる。 → 例えば4小節のメロディーがアイデアならば、そのメロディーが第一提示部にあるべきなのか、それとも前置きとして別のメロディーを提示してからアイデアの提示をするほうが効果的なのかを考え決める。 ・・・きりがないですね。しかしまあ、俗に言う"Composition"の部分っていうのは所詮はInspirationありきで存在する世界ということが見てとれます。まずはアイデアを発想する能力がないのに、Compositionの技術をいくら磨いた所で所詮は具なしサンドイッチ。逆に言うとCompositionの技術は学校で先生から学び習得することが出来るものです。でも、作曲の核でありすべての始まりであるInspirationは他人から習うことも出来ませんし、明確な会得方法論もこの世には存在しません。 そう、どんなに優れた演奏技術や電子音楽の設備を持っていても、どんなに優れたComposition技術を持っていても、何を表現したいのかのInspirationがないのならば曲作りというのはひっくり返ってもそもそも実施することが不可能です。小難しいことはちょっと横においといて、簡単に言うとつまりは"作りたいのか作りたくないのか"というだけの話です。日常会話に置き換えると、Aさんと二人で喫煙室にいて、話をしたいのかしたくないのか、というレベルの話です。したくないのに無理して言葉を出してもそこには意志がないのですから薄っぺらい社交辞令になるわけで、そんなものはAさんにとって何の意味もありませんし時間の無駄です。 しかし、この現代においてそのInspirationもしくは"理由"を自分ではない第三者から借りることは出来ます。上のAさんの例ですと、例えば会社の上司から「Aさんとは仲良くなっておくことが会社の今後に繋がるからしっかりとごまをすってこい」と言われたとしましょう。自分がAさんに対して個人的に何の興味もなくても上司の指示というアイデア(Inspiration)を元に会話を構成する(Composition)ことは可能ですよね。それはそれで技術のいることだとは思いますが、しかし一方で上司からInspirationを貰ってあとはCompositionするだけ、ならば出来るという人は世の中に沢山いるでしょうし、その方法は実際に学校で先生から習うことが出来ます。 作曲工程の①を出来るか出来ないかはクリエイターとしての立ち位置を大きく変えます。出来るから偉い、出来なければダメ、という話ではありません。それはもう生まれもっての自分という個性のあるべき姿がどちらなのか、それだけの話なのです。せっかくですから上の言葉を使いますと、自分というInspirationの状況や性質、可能性をしっかりと自分自身で洞察し理解した上でクリエイターとしての人生をCompositionすれば良いのです。 作曲という作業は、まあ大雑把に言うとそんな感じです。
by Alfred_61
| 2013-02-25 15:44
| 音の考察
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