何故か、本当に何故か、僕は毎回日本へ帰ったりアメリカへ戻ったりする飛行機の中で、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読む習慣があります。正直なところ、僕は確かに本は人並みに読む方ですが、一度読んだ本を何度も繰り返し読むと言うことはほとんどありません。でも、この短い未完のお話だけは、何故かみんなが寝静まった真っ暗の飛行機の中で、スポットライトの下で読みたくてたまらなくなるのです。 文章はやはり芸術の一種であり、ただ伝えたいことを誰かに伝達するということ以上のことが出来るのだなとこの話を読んでいるといつも感じます。別に人物がどんな風貌でどんな性格でということははっきり説明されていることはないのですが、何故か読んでいる間にだんだんまるで夢を見ているように物語の世界に落ちていくのです。 この話は、不完全な幻想第四次の銀河鉄道に偶然乗り合わせた主人公ジョバンニが、現実と空想の狭間、もしくは生と死の狭間に現れては消えていく人たちとの交流がメインとなっています。何がそれほど好きかというと、宮沢賢治は明確に"答え"や"結論"を全く書いていないということです。それはこれが未完の作品だからかもしれませんが。けれどもそこには漠然と大きな何かがあって、ジョバンニの視点から自分がその片隅を見るような、そんな不思議な感覚がこの話からはするのです。 ある意味、僕は"芸術家"というか、アーティストとして宮沢賢治の作品スタイルに強いあこがれを感じます。彼の私生活(花巻の農学校の先生)は少し理解できないというか、僕とは違うなと思うのですが、彼の残した作品群はまるでどれもこれも別々の価値というかメッセージがあり、作者が同じであるという以外はあまり共通性がないというか、そういう感じがします。僕もそれぞれの作品が長くても短くても独立していて、けれども全部僕らしいというか、そんな感じが理想だなと思っています。 僕は普段自分の世界のことばかりを音楽で表現しますが、いつか銀河鉄道の夜の話にそった曲を書いてみたいなと思っています。もう少し僕の立場が良くなって、もう少し自由に何でも出来るようになってから、のびのびとやりたいようにやろうと思います。好きなモノですから、中途半端にしたくはないんですよ。
by Alfred_61
| 2006-08-18 03:07
| 日記
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