微妙なことだけれど、それは絶対にネイティヴでなければ気づかないという言葉はどの言語にでも存在します。いくら大学で英文科にいても、その専門で博士号を持っていても、どうしてもたどり着けないものが、第二言語には必ずあるのです。僕は音楽を専門に勉強しているので、そういう人でなければ気づかない所に違和感を感じることも良くあります。 とある日本産アニメがアメリカで流れていたのですが、そこでこんな表現がありました。近未来でアンドロイドがショパンの"雨だれ前奏曲"を演奏し終わり、主人公がそのアンドロイドに言った言葉・・・。 "What a nice song. You are such a fabulous musician." ・・・。うん、これ、厳密に言えば間違ってます。根本的には、Songとは歌の入った曲のことで、純粋な器楽曲はPieceと表現する・・・ということになっています。ショパンの雨だれはピアノソロの曲ですから、これはSongではなくPieceと言うべきなのです。日本語には便利な"曲"という表現がありますが、英語で"曲"という言葉をそのまま表現する単語はありません。 そう、ないのですよ。だから、面白いことにSongとPieceの境界線がぼやけてきているのも事実なのです。ネイティヴでも、もう曲はなんでもSongだと言う人もいますし、世間的にもそう考えられています。例えば僕が曲の公開をしているサイト、Download.comでも、すでに"Pieces"というタブはなく代わりに"Songs"タブがあるのです。僕の曲は基本的に9割がPieceなのですが、ここではそれもひっくるめて"Song"と称されています。 今使われている言葉も来年には違う使われ方をしていたりしますし、アメリカ英語や日本語のように日々変化していく言語ではネイティヴでも分からないことは沢山あります。PieceとSongの違いなんてその典型のようなもので、とても相対的なものです。だから、最初はそのアニメを英語訳したのが日本人だからこんな初歩的な間違いをしたのかなと思いましたが、意外と日本語を知ってる英語のネイティヴが訳したのかもしれないなと思うのです。 日本の高校にいた頃からすでに渡米経験があってこういうことを知っていたから、僕は日本の英語の先生ってかなり見下していました。見下すというか、歴史や数学の専門家の先生方よりは下に見ていました。これがまた面白いことに日本に帰ったら最初に僕がする仕事が英語の先生かもしれないんですよね。あはは。音楽の専門家であることを忘れないようにしないとね。あの頃嫌いだった英語教師達と同じになっちゃわないように。
by Alfred_61
| 2006-11-06 02:59
| 日記
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