何となく自分の周りの世界をドラマタイズして話にしてみようかなと思いました。結構面白い話になると思うんですけどね。どうでしょうか。では、いきます。 一人だけ正社員の仕事があるベースのHが最後に合流して、その日の練習は始まった。その日は3時間かけて6曲を合わせたが、練習は思いの外捗り、結局次にスタジオを予約していたバンドに追い出されるように僕たちはスタジオを出てバーに向かった。ドラムのJが言った。 「今日は良いリハだったよなぁ。今でもあのがっちりグルーヴしてる感じが抜けねえ。」 「でも3曲目の中間部はまだちょっとゆるいよ。今度の練習はあそこ中心にやろ。」 僕が答えた。僕らは程なく行きつけのファッショナブルなカフェ・バーにたどり着き、機材を入り口の小部屋に押し込んでカウンター席に一列に並んだ。下戸のギターのTはいつもの通りローカロリーのハンバーガーを注文し、Hはサラダとトム・コリンズを、僕はいつも通り大ジョッキと豆腐の一品料理を頼んだ。あまりにも頻繁に通っているJには黒ビールと一人サイズのペパロニピザが注文せずともやってくることになっていた。 「今書いてる曲さぁ・・・」Tが言う。「どうにもしっくりこねえんだよなぁ。次の合わせで持ってくるから、みんなでちょっとさらってみようぜ。」 僕は答えた。「俺も今の曲、なんだか堅苦しさが抜けなくてさ、悩んでんのよ。最近は俺の堅苦しい曲を好んで聴くファンとか増えてきたけど、でもそういう曲だけ嫌いってファンが大多数だからなぁ。サントラ用とかには良いけど、ライヴには合わんよな。」 と、その時誰かの携帯が鳴った。Hのものだ。メールなのか、手元でごそごそやっている。 「何?」 「ああ、彼女。今仕事終わったって。ここ、呼んでも良い?」 「良いんじゃないの?」 H以外の全員が彼女なしなので、僕らはどうでもいいやという感じで答えた。でも、Hの彼女は一般的な視点で僕らの音楽に意見してくれる貴重な存在だから、みんな決して無下には扱わない。 「さあ、あの2曲目の出だしさあ、俺なんか遅れるんだけど・・・っておいJ!」 Tが真面目な話を始めたのにJはバーに入ってくる若い女性の団体を眺めてヘラヘラしていた。 「あ~、また病気だ。Jの女ウォッチング病。」 Jは正式な彼女こそいないが、実生活では常に女がヤツの部屋には出入りしている。別に僕たちは気にしていないが、Jはそれでも常に音楽を優先するので問題はない。実際、最近はファンもぼちぼち増えてきて、公式的に彼女のいない僕とTとJの三人は結構ラブレターっぽいものを貰ったりもする。Jは喜んで遊んでいるようだけど、僕とTは昔に色々あったせいで女関係にはほとんど手を出さない。二人とも過去を背負った渋い男を気取っているつもりだけど、実際は昔の女を忘れられないだけで、結構情けなかったりする。 「こんばんは~。」 「おう、久しぶり。仕事おつかれさん。」 Hの彼女がカウンターの端に残っていた最後の席に着いた。早速Tがさっきの悩みを相談してみる。 「なあ、彼女さんさ、俺たちの今一番新しい二曲って正直どう思う?」 「う~ん、なんだか分かんない間に曲が終わってるって感じかな。それはそれでなんだかお化け屋敷かジェットコースターみたいで面白いけどね。」 やっぱり彼女は僕らのご意見番だ。そういう風に聞こえるんだなぁと僕も純粋に驚いた。彼女は続けて言った。 「でももっと前の曲はそういう感じじゃないし、変化があっていいんじゃないの?お化け屋敷ばっかりだとちょっとしんどいかもしれないけど、今のライヴの演目なら良いバランスなんじゃないかな。」 「そうだよな~。次に何書くかが大事なんだよな~。たまにはお前もリフくらい書いたらどうだ?」 TがJに言うが、Jは相変わらずバーの入り口をきょろきょろ見ていてあんまり話を聞いているようではなかった。 「ま、次のリハで軽く合わせてみて、崩せるところは各自で崩す感じでやってみたら、結構ほぐれたお化け屋敷みたいになって面白いんちゃう?取りあえず肩の力抜いて、今書きたいもの書くのが俺とお前の仕事やとおもうから、あんまり気にすることないって。」 僕の言葉で取りあえず話はまとまり。すでに食べ飲み終わった僕らはさっさとバーを出た。 「あ、俺たちこれから飯行くから。また明日スタジオで。」 Hはそれだけ言って彼女と街に消えていった。続いてJが言う。 「俺はジャパニーズ・フロにゆっくり浸かってさっさと寝るわ。明日の仕事早いんだ。」 「じゃあ俺明日オフやし、その書きかけの曲聴きに行ってええかな?」 僕の言葉にTは軽く頷き、3人で駅へと向かって歩き出した。 こんな毎日が僕らはとても気に入っていた。忙しいし、お金の余裕も全然ないけど、こうやってスタジオで汗をかいた後は必ず反省会をすることになっている。それまで特に僕とTは独りよがりな作曲の世界にいたせいで、こんな風に音楽を仲間と作っていくことがとても心地よかった。その日僕はTのアパートに午前2時までいて、来るときに駐めておいたバイクで家に帰り、Jに感化されてひとっ風呂浴びて部屋に戻ったときには空がほんのり明るくなっていた。 あ~、なんかもっと書きたい感じになりますねえ。でもこんな感じって、多分本当に来年の今頃には起こっているかもしれないんですよね。僕らの周りでは。でもストーリーらしくしようとしたらもっとハプニング増やさないとダメかな。
by Alfred_61
| 2007-04-10 06:24
| 日記
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