音楽において恐らく最も大切なのが世界観です。どれだけその曲の世界観を強く感じることが出来るかは、曲を演奏する立場でも作る立場でも編曲する立場でも同様に重要なポイントです。所謂"実"の部分なのですよ。英語では肉と言います。サンドイッチを作る時にはちゃんと十分な肉を用意してから作りましょうって言うんですよ。肉がないのにサンドイッチを作っても薄っぺらくなり、美味しくないってね、面白い言い回しですよね。 自分の感じた世界観を表現するために、つまりは技術というものが必要なんですよ。技術とはあくまで世界観を表現するツールでしかなく、それ単体を見せ物にするようなものではそもそもないんです。世界観を持っていなければ、いくら技術が優れていても薄っぺらい音楽にしかなりませんし、世界観だけ強くても技術がなければ人に音楽は伝わりません。まあ、何にしてもまず世界観を持つことが音楽の作業としては第一歩なワケです。 後は、世界観をどれだけ強く持てるかが問題ですが、それには経験と訓練が必要です。プロと素人の根本的な違いはそこで、やっぱり練られた世界観は高価な機材なんかでは絶対に補えない音楽の核の部分を強くするので、作品そのもののレベルを一般人には手の届かない高みに持ち上げることに繋がります。古いLPとかの音源が今聴いても感動的なのは世界観のレベルでやはり昔の音楽家は優れていたからなんですね。 世界観と言いますが、それは言い換えればどれだけパーソナルにその音楽を捉えることが出来るかということです。自分が自分である以上、絶対に自分がその曲に対して持つ世界観は社会一般のそれとは異なり、それを言い換えるとオリジナルと呼ぶのです。昨日食べた白ご飯と今日食べた白ご飯の味がどう違うかを感覚するようなことです。自分が感じている味というものは絶対に他人が感じている味とは違い、自分オリジナルなものなのです。特に昨日と今日のご飯の味を比べるなんて、その違いをどう感じるかはもう個人で全然違うのです。感覚してはいるけれども気にかけない人もいれば気になって仕方がない人もいるのです。 つまり、巷のランキングなんて、自分が音楽に対して感じる感覚とは絶対に同じではなく、必ず差異のあるものなのです。個人の感覚はあまりにも相対的なので、基本的に音楽というものをああいう形でランク付けすることは出来ないのです。じゃあ何でランキングって存在するかって?それはほら、お金になるからじゃないですか。それだけの理由ですよ。聴く人のことなんて考えたらランキングなんて作るはずないじゃないですか、制作側が。 良く「私は音楽を特に理解できるワケではないのですが、理解したいと思います。どうしたらいいでしょうか」と相談されることがあるのですが、それはもう「貴方のオリジナルな世界観を感じさせてくれるほどの世界観を持った音楽を探す」ことしか出来ませんよね。それはランキングや流行廃りにとらわれていては絶対に見つかりませんよね。自分の思ったものを思ったように味見してみて確かめていくしかないでしょう。 僕が僕の信じたものを貫くのはつまり自分の世界観をとにかく強く持つように心がけているからで、それこそそれが社会一般の感覚や国単位の文化からどうずれているかとかまで感覚出来るほど僕は自分の世界観を研ぎ澄ませてから曲を書きます。だから僕の音楽は例え音程や楽器編成が古風でも、僕にしか作れないオリジナルなものなのです。その世界観をもっと磨いていくことこそ僕の生涯の勉強であり、挑戦です。
by Alfred_61
| 2008-05-19 02:04
| 日記
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